災害への備え 3 -マイクロチップについて-
災害時において飼い主さんが一番心配されているのは、混乱で動物達と離ればなれになってしまうことでしょう。
阪神淡路大震災では1500頭以上の動物が保護されたそうです。
災害は飼い主さんが不在時に起こることもあり、平常時から必ず迷子札を装着することは絶対に必要です。
しかし首輪や迷子札ははずれてしまうこともあるかもしれませんし、情報が消えたり読みにくかったりするかもしれません。
電話番号やペットの名前だけでは自宅の電話が使えなければ手元には届かないこともあるでしょう。
マイクロチップは災害時の混乱の中でも確実にペットと飼い主さんを結びつけることが出来る点で優れています。
短期間の旅行であっても、海外に犬(猫)を連れていくときは輸出検疫を、日本に帰国するときは輸入検疫を受けなければなりません。
不備がなければ12時間以内の係留で済むところ不備があると180日係留されることもありますので今後海外旅行にペットを連れて行く機会のありそうな方は余裕を持ってあらかじめチップ装着をしておくことをお勧めします。
Q:マイクロチップって?
直径約2mm×長さ約10-13mmの小さな生態適合ガラス製でできた円筒形の電子標識器具です。
Q:マイクロチップにはどんな情報が入っているの?
チップには国コード(日本は392)、動物種コード(ペット14)、個体番号等が組み合わされた世界でただ一つの個体識別番号が記録されています。(ID番号15桁の数字)
飼い主さんの名前やペットの名前が直接記録されているわけではありません。
Q:チップの注入は痛いんでしょ? 麻酔するの?
注入の針の太さを見て飼い主さんは一様に驚いてしまうと思いますが、皮膚をつまんで持ち上げ短時間で注入するものですから、一般の皮下注射と変わりません。勿論麻酔も必要ありません。
針先がナイフ状になっているのでチクッとする刺激はあるかもしれませんが、当院でこれまで注入した子たちはその子の大きさや種別は関係なく特に痛がる様子はありませんでした。
しかし当院では多少の出血があることや万が一の傷からの感染を考慮し抗生物質の軟膏を塗布するか抗生剤入り接着剤をスプレーしています。
Q:どこに挿入するの?
左側肩甲骨皮下組織です。
Q:副作用は?
世界的にみてマイクロチップ挿入による副作用の報告はほどんどありません。発癌性などの異物反応も報告されていません。
世界各国で既に使用されているもので、さまざまな臨床実験によって安全性が証明されています。
ただし、当院の患者さんで子犬のとき他院でマイクロチップを注入した場所がしこりになったという方がいましたので絶対に無いということは言えないと思います。
Q:ペットショップ(ブリーダーさん)で子犬のときマイクロチップを装着したと聞いているのですが、調べられますか?
マイクロチップの規格により読み取り機が対応していない場合以外はID番号の確認はできます。
装着した際に飼い主情報がどなたの名前になっているかペットショップ(ブリーダーさん)または装着した獣医さんがわかれば確認してみてください。
できればIDデータの登録情報を変更し、現飼い主さんの情報に登録しなおしましょう。
それができなければ再度マイクロチップを装着したほうがいいでしょう。
Q:他国入国への問い合わせの際ISO規格に準じたものを指定されたのですが、ISO規格って何ですか?
国際標準化機構(International Organization for Standardization=ISO)。
もともと工業製品の国際標準規格を策定する機関です。
ネジ山、文字コード、クレジットカードのサイズ、写真フィルム感度、非常口の図柄などが有名です。国際的な統一規格として国際的な流通に大きく寄与しています。
お問い合わせいただいた件に関しては、マイクロチップのデータコードと通信方式(電波の周波数など)についてISO規格に準じたISO 11784(データーコード)、ISO 11785(通信方式)のものを装着してください、ということです。
日本国内で販売されているマイクロチップは農林水産省の許可に基づき国際規格の製品が販売されていますが、念のため獣医さんに伝えてください。
Q:ペットがISO規格のマイクロチップを装着しないで日本に到着するとどうなるのですか。
まずは事前に到着予定港の動物検疫所に問い合わせしましょう。
ISO規格以外の場合は、自ら適合する読み取り機を用意し、マイクロチップ番号を確認できるようにしてください。
日本到着時の輸入検査でマイクロチップの番号が確認できない、あるいはマイクロチップが輸出国政府機関の証明書と照合できない場合は個体識別措置が講じられていないとみなされ、180 日間の係留検査となりペットは勿論のこと飼い主さんにも大変なストレスになります。
ペットの出入国があるときはできるだけ早めに動物検疫所に連絡をしましょう。
特に犬の場合、何れの方法でも輸出国政府機関の証明書との照合ができないとき、検査証明書がないものとして返送となりますので注意が必要です。
Q:犬猫以外のペットに装着することってできますか?子犬や子猫でも大丈夫?
ほとんどの動物に装着可能です。(哺乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類。)
ただし皮下注射ですから動物種により向き不向きはあると思います。
ハムスターなどの小さい個体についても針の太さなどを考慮するとあまりおすすめできない気がします。
子犬猫に関しては生後4週齢位から可能ですが、その種別や個体の大きさによって獣医さんに判断を委ねたほうがいいと思います。
Q:どんな情報を登録するの?
注入日、飼い主情報(氏名、住所、電話、FAXなど)のほか、注入した獣医師や動物病院の情報、勿論装着したペットの名前、生年月、性別、動物種(犬、猫、その他)、動物の種類(犬種、猫種など)に加え、毛色の情報を登録します。
Q:マイクロチップを装着したあとはどうすればいいの?
環境省のホームページ「犬と猫のマイクロチップ情報登録」で登録を行なって下さい。登録には「マイクロチップ装着証明書」が必要となります。登録を行うと「登録証明書」がダウンロードできるようになります。「登録証明書」は大切に保管して下さい。
Q:すぐに海外に転勤する場合はどこの住所で登録すればいいの?
海外への転勤などで数年で日本に戻る予定があり国内にご家族が残る場合などは国内の登録をそのままにしてとりあえず現住所で登録しましょう。
必要があれば海外に移住した時点で近くの動物病院でIDをスキャンしてもらい、それぞれの国のデータ登録会社に登録しなおしましょう。